ゲルニカ



                             写真提供 竹田征三氏
    
「ゲルニカ」の理解を深めるために   2012-7-10 竹田 征三
 
0   ようこそおいでくださいました。あなたは幸運な方ですね。なぜかって?
「ゲルニカ」は今から75年前の1937年6月4日(昭和12年)に完成しました。
実物の大きさはヨコ7.8メートル、タテ3.5メートルです。大きいですね。

1    現在スペインの首都マドリッドにあるソフィア王妃芸術センターに展示されています。しかし今は国外はもとより国内での貸し出しも禁止されているため「ゲルニカ」はマドリッドに行かなければ見ることができなくなりました。  「あなたは幸運ですね」と言ったのは実物大の「ゲルニカ」を目の前でこんなに近くで見ることができたからです。 
ただし模写ですがね。

2   パリに住んでいたピカソはスペイン共和国政府から1937年パリ万国博覧会のスペイン館に展示する絵の製作依頼を受けていたのですが何を描くのか決めかねていました。
当時ナチスドイツやロシア社会主義、フランス、イギリスなどの列強の思惑が交錯するなかピカソの母国スペインはフランコの反乱軍による内乱が勃発し各地で内戦状態でした。戦火が各地に広がり4月26日バスク地方の小さな町ゲルニカが無差別空爆を受け多くの死者、負傷者がでました。ナチスドイツのコンコルド旅団とイタリア軍の援護を受け、最新兵器を投入した史上はじめての大規模無差別空爆のニュースはヨーロッパ、アメリカを駆け巡りました。  パリにいたピカソはニュースで知り怒りに燃え、スペインを救わねばと強く心に決め、「ゲルニカ」の製作を決意します。

3   5月1日ピカソは、はじめて6枚の下絵を描きます。 まだおぼろけな構想ですが核心をついたデッサンです。 5月11日練り上げたデッサンをもとに用意してあったキャンバスに、はじめて油絵の絵具で描きます。 製作過程の写真や45枚の下絵デッサンを会場内に展示してありますのでゆっくり見てください。  そして6月4日完成します。こんな大きな絵をたったの24日間で完成したことになります。  天才画家ピカソの成せる業ですね。

4   「ゲルニカ」には何が描かれているのでしょうか。  左上の/牝牛、 中央の/瀕死の馬、 上の/窓から灯りを差し出す女、 右下の/死んだ兵士、 左の/死んだ子供を抱いて泣く女、 中央に向かって走りこむ女、 右上の/建物から焼け落ちて行く女、 中央上の/大きなランプ、 下中央の/一輪の花アネモネ、 が描かれていますね。

5   ではピカソは何を描きたかったのでしょうか。  ピカソはこの「ゲルニカ」の絵について瀕死の馬を「世界の人類すべて」と言っただけでほとんど何も発言していません。ピカソが怒りを込めて描いた「ゲルニカ」を今私たちはどのように受け止めたらいいのでしょうか。  ピカソに代わって今を生きている私たちが解きほぐしていく時と私は思います。
ピカソは強い口調で「芸術家をなんと思いか。画家なら目、音楽家なら耳、詩人であれば抒情、ボクサーなら筋肉にほかになにももたない愚かな者だとても思いか。それはとんでもないかんちがい。 芸術家はそれだけでなく政治的存在でもあり、世の中の悲しみ、情熱、あるいは歓びにつねに関心を抱き、ただその印象にそってみずからをかたちづくっている。・・・・絵はアパートを飾るために描かれるのではない。 絵は戦争の道具です」と生涯貫いた信念を語っています。

6   1937年のパリ万博での「ゲルニカ」の評価はファシズムの台頭により二分され、決して良い評価ではありませんでした。 しかし「ゲルニカ」の芸術的評価は心ある人々に支えられ高まり「ゲルニカ」を戦火から逃れるためニューヨーク近代美術館に移送され、1981年9月10日42年の年月を経て初めてスペインの土を踏みました。 今はソフィア王妃芸術センターに移され展示されていますが毎年100万人以上の鑑賞者があると報じられています。

7   「ゲルニカ」は今も息づいています。 こんな話があります。 「アメリカの政府高官が2001年9月11日に起きた同時多発テロに関連して、イラクの核保有の証拠を見つけたと国連安全保障理事会の入り口で報道陣を前に熱弁をふるった際、高官を撮れば必ず見える位置にあるはずの「ゲルニカ」の複製画は青いカーテンと加盟国の国旗によって覆われていた」と報じられました。 「ゲルニカ」は、今でも戦争を仕掛ようとする人たちにとっては都合の悪いものらしいですね。

8   さてみなさん、ピカソはなぜ「ゲルニカ」を描いたのか、「ゲルニカ」は何を語っているのか、「ゲルニカ」を知る、ピカソを知る、そして今の私たちを取り巻く現実の社会を見渡したとき、「ゲルニカ」が伝えようとしたことはなにか。絵を前にして考えてください。

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